手品師シャオの冒険 第三話 07/20/2008
第三話 マダム・マドンナの巻
可愛い子には旅をさせるな
一人にさせるな
殺される!
殺される!!
時代は変わったのだ
殺される!!!
***
シャオは相変わらず忙しい毎日を送っている。
とにかく
忙しい忙しい忙しい忙しい。
疲れた疲れた疲れた疲れた。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
いつの間にか口癖になり頭の中で繰り返される。
「・・・はぁ・・・」
そしてため息。何で忙しいのかワカラナイくらいイソガシイ。客が少ないときは倉庫で商品の管理や電話応対、出張修理受け付け・・・何だ何だ、一体・・・
「どうかしてる、最近」
帰り支度を整え、明日メーカーとのやりとりの確認をして、日報を書いて、やっと店の外に出る。ちらつく星が遥か上方に見え、充血した目をゆっくりと瞬きさせる。
「ホッ・・・今日も何とかなってよかった」
その日しのぎ、その場しのぎ。そしてまた、ずるずると明日に不安を引きずるのである。今日は順調にいったから・・・明日は悪くなるのではないか・・・と、いうふうに。悪いことは予知ができず「たまたま」起きるものであるから、その分不安が余計に募る。予見できないことは、ある程度仕方のないものだ。クレームなんかきっと誰かが犠牲になってしまうもの・・・
悪いことは重なるものです。
クライ・アンド・ビー
泣きっ面に蜂。
その姿をマダム・マドンナは見ていた。
可愛い子には旅をさせるな
一人にさせるな
殺される!
殺される!!
時代は変わったのだ
殺される!!!
***
シャオは相変わらず忙しい毎日を送っている。
とにかく
忙しい忙しい忙しい忙しい。
疲れた疲れた疲れた疲れた。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
いつの間にか口癖になり頭の中で繰り返される。
「・・・はぁ・・・」
そしてため息。何で忙しいのかワカラナイくらいイソガシイ。客が少ないときは倉庫で商品の管理や電話応対、出張修理受け付け・・・何だ何だ、一体・・・
「どうかしてる、最近」
帰り支度を整え、明日メーカーとのやりとりの確認をして、日報を書いて、やっと店の外に出る。ちらつく星が遥か上方に見え、充血した目をゆっくりと瞬きさせる。
「ホッ・・・今日も何とかなってよかった」
その日しのぎ、その場しのぎ。そしてまた、ずるずると明日に不安を引きずるのである。今日は順調にいったから・・・明日は悪くなるのではないか・・・と、いうふうに。悪いことは予知ができず「たまたま」起きるものであるから、その分不安が余計に募る。予見できないことは、ある程度仕方のないものだ。クレームなんかきっと誰かが犠牲になってしまうもの・・・
悪いことは重なるものです。
クライ・アンド・ビー
泣きっ面に蜂。
その姿をマダム・マドンナは見ていた。
注意書き 02/02/2008
これから「手品師シャオの冒険」をお読みになる皆様へ
ストレスまみれのOLと、不思議な介護ヘルパーさんのお話。
Marchen Heartにお越しいただき、誠にありがとうございます。
「手品師シャオの冒険」を読む前に、一つ、言っておきたいことがあります。
この話にはちょっと残酷な描写が出てきたり、主人公自体が口の悪いキャラクターなので、そういったものに嫌悪感を抱く方はどうぞ他の小説を楽しんでください。
この話で言いたいこと、思っていることを書いてしまいたいと思っています。
前に挙げた4作品とはまた少し違ったテイストに仕上がりそうなので、まだ不安な面がありますが、どうかよろしくお願いします。
茉莉
ストレスまみれのOLと、不思議な介護ヘルパーさんのお話。
Marchen Heartにお越しいただき、誠にありがとうございます。
「手品師シャオの冒険」を読む前に、一つ、言っておきたいことがあります。
この話にはちょっと残酷な描写が出てきたり、主人公自体が口の悪いキャラクターなので、そういったものに嫌悪感を抱く方はどうぞ他の小説を楽しんでください。
この話で言いたいこと、思っていることを書いてしまいたいと思っています。
前に挙げた4作品とはまた少し違ったテイストに仕上がりそうなので、まだ不安な面がありますが、どうかよろしくお願いします。
茉莉
手品師シャオの冒険 第二話 02/02/2008
第二話 ビクトリー・エリザベータの巻
手品師シャオ、心が溶ける!
世界で一番美しい女性!
とびきりの笑顔!
素敵な笑顔!!
***
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのは誰ですの?」
おフランスおパリのお凱旋門の知られざる一室、一人の女性が鏡に向かって話しかける。
「それはマダム・マドンナ様、あなたにございます」
暗い部屋の中、壁に掛かった鏡は青白く光りながら低い声で答える。
「ホーッホッホッホ・・・あなたは正直者ですわ」
ところがどっこい、その女の後ろには、沢山の割られた鏡があった。その割られた鏡は足場がないほど埋め尽くし、そしてついに999枚目の鏡は彼女に嘘をついた。
「・・・・・!!」
しかしその鏡は自分の言った嘘に耐えきれなくなり、赤い光を放ちながら震えだした。
「あら、いかがなさいましたの?」
ピシピシピシ!・・・パリン!!
なんとその鏡は自分から割れてしまったのである。
「キーッ!!正直にお言い!世界で一番美しいのは誰ですの!?割らないから正直に言ってごらんなさい!!」
と、マダム・マドンナはついに1000枚目の鏡に手を出した。
「マダム・マドンナ様、世界で一番美しいのはアデリーヌ様にございます」
「名字は?それにどんな顔をしているの!?」
「それは個人情報の関係でお伝えすることはできません」
「キーッ!じゃあどこにいるの!?国籍くらいは教えなさい!!」
「イギリスのロンドンにお住まいです」
その鏡は、その「アデリーヌ」という女性を鏡に映し出した。しかし、顔は個人情報の関係か、モザイクが掛かっている。そして目元は黒い横線で隠されている。まるで、指名手配のようである。
「あら、ピンクの上に白のズボン?介護のヘルパーさんね」
そう言われて慌てて1000枚目の鏡はその映像を消した。マダム・マドンナはもともとフランスの化粧品店で働いており、のちに美容整形外科医として勤務、態度の悪い患者を矯正不能なほど思い切り不細工にした後で姿をくらました。自分より美しいものはすべて許さない性格で、とにかく殺すか顔面に怪我でもさせないと気が済まない。また、ファッションセンスもよく、服の色を見ただけでアデリーヌが介護のヘルパーであることにも気が付いた。
「アデリーヌ・・・見てらっしゃい!!」
マダム・マドンナはアデリーヌを標的に定めた。
その時だ。
「あら、何かしら」
一羽のカラスが、部屋の中に白い封筒を残していった。
「殺人依頼」
***
「よく来てくれたざます」
「ホホホ・・・ちょうどよろしくてよ。グッドタイミングですわ」
ここはおイギリスおロンドンにあるロンドン塔の最上階にある「開かずの間」。ここには何世紀も前からビクトリー・エリザベータという女性が住んでいる。彼女はシャオの先祖に自分の身分を落とされて家系をボロボロにされ、未だに恨みを引きずっており、シャオを殺そうとしているのである。いつから生きているのかは、誰も知らない。
「マダム・マドンナ、噂に聞けばあなたは狙った人物は外さない殺し屋ざます」
「ホホホ・・・殺し屋とは人聞きが悪ぅございますわ。わたくしは自分より美しいものしか興味がありませんの」
「それは失礼したざます。今回の依頼というのは・・・」
ビクトリー・エリザベータは一枚の写真を取り出した。
「あら」
「ロンドンの12番街に住んでいる男ざます。名前はシャオ」
マダム・マドンナは写真を受け取りうっとりしたように見入る。そして唇を釣り上げ、目を細めて微笑む。
「綺麗な方ですわ。女性でしたら殺してたでしょうに。輪郭、眉の太さ、目元から完璧なスタイルですわ。ところで報酬はたっぷりといただけるんでしょう?」
「それはもちろんざます。好きな金額を言ってくれればいいざます」
「まぁ嬉しい」
「でも後払いざます」
「なんですって?」
マダム・マドンナの顔がこわばる。
「どうしてですの?普通、殺し屋の報酬というものは先払いですわ」
「今まで私は何人もの殺し屋に依頼したざます。どれも失敗に終わったざます」
「どうなすって?」
「殺されたざます」
「なぜですの?」
「わからないざます。いつの間にか、屍になっているざます」
「・・・・・」
マダム・マドンナは考えた。手元にあるのはただの普通の人間が写っているだけ。色白い肌に、黒髪、黒目。一見、普通の一般市民。こんな一般人が殺し屋殺し?
「何か彼について知ってることがあったら教えていただきたいですわ」
「彼は廃園した遊園地の手品師だったざます」
「手品師?」
「そうざます。くれぐれも仕掛けやトラップには気を付けるざます」
「今は?」
「12番街に住んでいるというだけで、あとはどこにいるかわからないざます」
「わからないの?」
「カラスに聞いてもわからないざます」
「カラス?」
「門番ざます」
窓の外を数羽のカラスが飛ぶ。ビクトリー・エリザベータが飼っている、ロンドン塔の門番である。
「・・・あなたがそこまで言うならば一度下見が必要ですわ。それから金額は決めましょう」
「気を付けるざます。下見の時に命を落とした刺客もいるざます」
「・・・・・」
マダム・マドンナは一度、ビクトリー・エリザベータから視線を反らして考えた。そして再び、シャオの写真を見て、突然不気味な笑みを浮かべた。
「お引き受けいたしますわ。面白くなりそうですわ」
「そうざますか」
マダム・マドンナは顔を上げた。
「ええ。この写真はいただいていきますわ」
「最低でも首は持ってくるざます。生け捕りなら倍の報酬を用意するざます」
「ウフフ・・・自分で首をちょん切るおつもりですのね」
「そうざます。その方が楽しみざます」
「そう・・・この皮膚誰かの移植に使いたかったのに。残念ですわ。心臓じゃ駄目ですの?」
「私が首をはねたらあとは好きにしていいざます」
「・・・メルシー」
マダム・マドンナはうっとりしたような気持ち悪い声で言った。
「あら、そういえば」
マダム・マドンナは何か思いついたように言葉を発した。
「12番街といえば有名な電気屋があるところですわ。まず、そこに行ってからですわね」
「好きにするざます」
「ウフフ・・・ちょうどプラチナミストの最新式美容器具が欲しかったのですわ・・・」
ロンドンの町に降り立ったマダム・マドンナは、新聞を片手にクスッと笑った。
「可愛そうに」
そこには、幼い子供とその親が犠牲になった事件が載せられている。犯人はただの親戚か何か・・・
「オバカな殺人者が増えたこと・・・」
ピンク色のドレスに、お揃いのフリルの付いた傘。
「もう少し・・・わからないように細工しなくちゃねぇ」
マダム・マドンナ、人を殺すたび
顔と名前を変えてきた魔性の女
片手に傘と片手にメスを
あなたのその皮膚をもらいに
***
シャオの勤める「サンシャイン電器」は、大通りに面しており、来客数も売上高もまあまあよい実績を上げていた。ところが最近家電量販店の競争が激化し、売上高も悪くはないのだが横ばい状態だった。そして目と鼻の先には、ライバル社「ムーンライト電器」があり、少し離れて「スター電器」が、そのまた先に「ジュピター電器」、駅の近くに「家電のビッグバン」という家電量販店がある。
「まったく、どうして今日は修理が多いんだろ」
「そういう日もあるって、シャオ。たまたまその日だけいつもあるようなインクがなかったりしてねぇ」
と、50代くらいのパートのおばさんが笑う。シャオの会社は修理も商品の注文も同じカウンターで受け付けるため、何かと大変なのである。
「ごめんください」
突然、シャオの前に、一人の女性が現われた。片手にはピンク色のフリルの付いた傘、金髪を少しカールさせた髪、大きな帽子に、お洒落なドレス。首にはいかにも高そうなダイヤモンドのネックレス。そして青い瞳に小さな唇。小柄な顔が、愛くるしくシャオの方を見ている。シャオもシャオで、なかなか次の言葉が出なかった。
「あ、い、いらっしゃいませ」
「最新式のプラチナミストの美容器具をいただきたいのですわ。どちらですの?」
「あ、それならこちらです」
たまたまカウンターの後ろに陳列してあったため、すぐに取り出すことができた。ドライヤーやアイロンなどの小さなものは盗難防止のため、展示してある商品の値札のところに引換券を置いておくのだ。
「こちらになります」
「これは何年製ですの?」
「2001年製でございます」
「2001年製ですって!?どうしてそれが最新式なんですの!?」
「いえ、こちらのプラチナミストのモデルはこちらが最新式でして・・・」
「違うの!私が欲しいのは最新式のですわ!」
「で、ですからこちらの商品が最新モデルになりますので・・・」
「どんだけ時代遅れなの!あなたたちは!!それでも電器屋!?」
「も、申し訳ございません・・・ですがこちらの商品が・・・」
「もういいわよ!!」
マダム・マドンナは店から出ていった。
「・・・・・」
「な・・・何が聞きたかったんでしょうかねえ・・・」
「さ、さぁ・・・」
一体なんだ、せっかく人がこれから説明するってのに。人の話ぐらい最後まで聞け!!ガキじゃあるまいし、そこまでして貴様は美しくなりてぇのか!?どーせあと何ン十年したら見違えるほど不細工になってるから心配すんじゃねぇ!!
「シャオ、レジ」
「あ、すみません」
こうして、シャオは日に日に口が悪くなっていくのでした。
第三話 マダム・マドンナの巻に続く
手品師シャオ、心が溶ける!
世界で一番美しい女性!
とびきりの笑顔!
素敵な笑顔!!
***
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのは誰ですの?」
おフランスおパリのお凱旋門の知られざる一室、一人の女性が鏡に向かって話しかける。
「それはマダム・マドンナ様、あなたにございます」
暗い部屋の中、壁に掛かった鏡は青白く光りながら低い声で答える。
「ホーッホッホッホ・・・あなたは正直者ですわ」
ところがどっこい、その女の後ろには、沢山の割られた鏡があった。その割られた鏡は足場がないほど埋め尽くし、そしてついに999枚目の鏡は彼女に嘘をついた。
「・・・・・!!」
しかしその鏡は自分の言った嘘に耐えきれなくなり、赤い光を放ちながら震えだした。
「あら、いかがなさいましたの?」
ピシピシピシ!・・・パリン!!
なんとその鏡は自分から割れてしまったのである。
「キーッ!!正直にお言い!世界で一番美しいのは誰ですの!?割らないから正直に言ってごらんなさい!!」
と、マダム・マドンナはついに1000枚目の鏡に手を出した。
「マダム・マドンナ様、世界で一番美しいのはアデリーヌ様にございます」
「名字は?それにどんな顔をしているの!?」
「それは個人情報の関係でお伝えすることはできません」
「キーッ!じゃあどこにいるの!?国籍くらいは教えなさい!!」
「イギリスのロンドンにお住まいです」
その鏡は、その「アデリーヌ」という女性を鏡に映し出した。しかし、顔は個人情報の関係か、モザイクが掛かっている。そして目元は黒い横線で隠されている。まるで、指名手配のようである。
「あら、ピンクの上に白のズボン?介護のヘルパーさんね」
そう言われて慌てて1000枚目の鏡はその映像を消した。マダム・マドンナはもともとフランスの化粧品店で働いており、のちに美容整形外科医として勤務、態度の悪い患者を矯正不能なほど思い切り不細工にした後で姿をくらました。自分より美しいものはすべて許さない性格で、とにかく殺すか顔面に怪我でもさせないと気が済まない。また、ファッションセンスもよく、服の色を見ただけでアデリーヌが介護のヘルパーであることにも気が付いた。
「アデリーヌ・・・見てらっしゃい!!」
マダム・マドンナはアデリーヌを標的に定めた。
その時だ。
「あら、何かしら」
一羽のカラスが、部屋の中に白い封筒を残していった。
「殺人依頼」
***
「よく来てくれたざます」
「ホホホ・・・ちょうどよろしくてよ。グッドタイミングですわ」
ここはおイギリスおロンドンにあるロンドン塔の最上階にある「開かずの間」。ここには何世紀も前からビクトリー・エリザベータという女性が住んでいる。彼女はシャオの先祖に自分の身分を落とされて家系をボロボロにされ、未だに恨みを引きずっており、シャオを殺そうとしているのである。いつから生きているのかは、誰も知らない。
「マダム・マドンナ、噂に聞けばあなたは狙った人物は外さない殺し屋ざます」
「ホホホ・・・殺し屋とは人聞きが悪ぅございますわ。わたくしは自分より美しいものしか興味がありませんの」
「それは失礼したざます。今回の依頼というのは・・・」
ビクトリー・エリザベータは一枚の写真を取り出した。
「あら」
「ロンドンの12番街に住んでいる男ざます。名前はシャオ」
マダム・マドンナは写真を受け取りうっとりしたように見入る。そして唇を釣り上げ、目を細めて微笑む。
「綺麗な方ですわ。女性でしたら殺してたでしょうに。輪郭、眉の太さ、目元から完璧なスタイルですわ。ところで報酬はたっぷりといただけるんでしょう?」
「それはもちろんざます。好きな金額を言ってくれればいいざます」
「まぁ嬉しい」
「でも後払いざます」
「なんですって?」
マダム・マドンナの顔がこわばる。
「どうしてですの?普通、殺し屋の報酬というものは先払いですわ」
「今まで私は何人もの殺し屋に依頼したざます。どれも失敗に終わったざます」
「どうなすって?」
「殺されたざます」
「なぜですの?」
「わからないざます。いつの間にか、屍になっているざます」
「・・・・・」
マダム・マドンナは考えた。手元にあるのはただの普通の人間が写っているだけ。色白い肌に、黒髪、黒目。一見、普通の一般市民。こんな一般人が殺し屋殺し?
「何か彼について知ってることがあったら教えていただきたいですわ」
「彼は廃園した遊園地の手品師だったざます」
「手品師?」
「そうざます。くれぐれも仕掛けやトラップには気を付けるざます」
「今は?」
「12番街に住んでいるというだけで、あとはどこにいるかわからないざます」
「わからないの?」
「カラスに聞いてもわからないざます」
「カラス?」
「門番ざます」
窓の外を数羽のカラスが飛ぶ。ビクトリー・エリザベータが飼っている、ロンドン塔の門番である。
「・・・あなたがそこまで言うならば一度下見が必要ですわ。それから金額は決めましょう」
「気を付けるざます。下見の時に命を落とした刺客もいるざます」
「・・・・・」
マダム・マドンナは一度、ビクトリー・エリザベータから視線を反らして考えた。そして再び、シャオの写真を見て、突然不気味な笑みを浮かべた。
「お引き受けいたしますわ。面白くなりそうですわ」
「そうざますか」
マダム・マドンナは顔を上げた。
「ええ。この写真はいただいていきますわ」
「最低でも首は持ってくるざます。生け捕りなら倍の報酬を用意するざます」
「ウフフ・・・自分で首をちょん切るおつもりですのね」
「そうざます。その方が楽しみざます」
「そう・・・この皮膚誰かの移植に使いたかったのに。残念ですわ。心臓じゃ駄目ですの?」
「私が首をはねたらあとは好きにしていいざます」
「・・・メルシー」
マダム・マドンナはうっとりしたような気持ち悪い声で言った。
「あら、そういえば」
マダム・マドンナは何か思いついたように言葉を発した。
「12番街といえば有名な電気屋があるところですわ。まず、そこに行ってからですわね」
「好きにするざます」
「ウフフ・・・ちょうどプラチナミストの最新式美容器具が欲しかったのですわ・・・」
ロンドンの町に降り立ったマダム・マドンナは、新聞を片手にクスッと笑った。
「可愛そうに」
そこには、幼い子供とその親が犠牲になった事件が載せられている。犯人はただの親戚か何か・・・
「オバカな殺人者が増えたこと・・・」
ピンク色のドレスに、お揃いのフリルの付いた傘。
「もう少し・・・わからないように細工しなくちゃねぇ」
マダム・マドンナ、人を殺すたび
顔と名前を変えてきた魔性の女
片手に傘と片手にメスを
あなたのその皮膚をもらいに
***
シャオの勤める「サンシャイン電器」は、大通りに面しており、来客数も売上高もまあまあよい実績を上げていた。ところが最近家電量販店の競争が激化し、売上高も悪くはないのだが横ばい状態だった。そして目と鼻の先には、ライバル社「ムーンライト電器」があり、少し離れて「スター電器」が、そのまた先に「ジュピター電器」、駅の近くに「家電のビッグバン」という家電量販店がある。
「まったく、どうして今日は修理が多いんだろ」
「そういう日もあるって、シャオ。たまたまその日だけいつもあるようなインクがなかったりしてねぇ」
と、50代くらいのパートのおばさんが笑う。シャオの会社は修理も商品の注文も同じカウンターで受け付けるため、何かと大変なのである。
「ごめんください」
突然、シャオの前に、一人の女性が現われた。片手にはピンク色のフリルの付いた傘、金髪を少しカールさせた髪、大きな帽子に、お洒落なドレス。首にはいかにも高そうなダイヤモンドのネックレス。そして青い瞳に小さな唇。小柄な顔が、愛くるしくシャオの方を見ている。シャオもシャオで、なかなか次の言葉が出なかった。
「あ、い、いらっしゃいませ」
「最新式のプラチナミストの美容器具をいただきたいのですわ。どちらですの?」
「あ、それならこちらです」
たまたまカウンターの後ろに陳列してあったため、すぐに取り出すことができた。ドライヤーやアイロンなどの小さなものは盗難防止のため、展示してある商品の値札のところに引換券を置いておくのだ。
「こちらになります」
「これは何年製ですの?」
「2001年製でございます」
「2001年製ですって!?どうしてそれが最新式なんですの!?」
「いえ、こちらのプラチナミストのモデルはこちらが最新式でして・・・」
「違うの!私が欲しいのは最新式のですわ!」
「で、ですからこちらの商品が最新モデルになりますので・・・」
「どんだけ時代遅れなの!あなたたちは!!それでも電器屋!?」
「も、申し訳ございません・・・ですがこちらの商品が・・・」
「もういいわよ!!」
マダム・マドンナは店から出ていった。
「・・・・・」
「な・・・何が聞きたかったんでしょうかねえ・・・」
「さ、さぁ・・・」
一体なんだ、せっかく人がこれから説明するってのに。人の話ぐらい最後まで聞け!!ガキじゃあるまいし、そこまでして貴様は美しくなりてぇのか!?どーせあと何ン十年したら見違えるほど不細工になってるから心配すんじゃねぇ!!
「シャオ、レジ」
「あ、すみません」
こうして、シャオは日に日に口が悪くなっていくのでした。
第三話 マダム・マドンナの巻に続く
新連載の?お知らせ 01/29/2008

茉莉>あんた誰?
シャオ>貴様、それが作者の言う言葉か。この機関車モーマスめ。
茉莉>わかったわかった悪かったってば。ちゃんと始めます始めます。始めればいいんでしょ!でもモーマスって呼ぶのはやめて。モー●。みたいで微妙なんだよ!!
シャオ>・・・ったく、なんでいきなり怪物紳士の歌が間に挟まるわトーマスにはまるわで・・・
茉莉>だから悪かったってば!見捨てないでぇ・・・あくまで本館はこっちなのよ〜
シャオ>とりあえず謝っとけ。
茉莉>うー、にしても何だその口の悪さは。
シャオ>そういうキャラ設定なんだよ!それよりも粗筋復習しろ!!
茉莉>うーん、これまでの粗筋・・・舞台はロンドン。近所の騒音おばさんに悩まされていた主人公の前に、不思議な介護ヘルパーさんが現われる。刺客に命を狙われながらも、そのヘルパーさんの謎に迫る。
シャオ>ちょいと待て。
茉莉>はい、何か?
シャオ>どこが「冒険」なんだ?
茉莉>冒険=人生ってことで。今思えば手品師じゃなくて「元」手品師だな。
シャオ>悪かったな。
茉莉>大丈夫。戦うときはちゃんと「手品師シャオ」だから。
シャオ>またわけのからないことを。
茉莉>ラストは涙の感動の予定です。ハンカチをご用意ください。
シャオ>あっそ。あんまり期待すんなよ。
茉莉>ちなみに、シャオって名前は過去作品「トワイライト・サーカス」の団長の本名でもあります。
シャオ>それは初公開ですね。
茉莉>でもこの話のシャオとは一切関係ありません。
シャオ>言うまでもねぇよ。
茉莉>さてさて、登場人物イラストはこんな淡い感じで行きたいなと思ってます。ウエットインウエットが苦手な人は紙を変えてみるのも手ですよ!
シャオ>登場人物って・・・ほぼ悪役だがな。それよりさっさと連載始めろ!
茉莉>果てしない大地に〜うまれ〜た日から〜♪生きることはそ〜さ〜ぼ・お・け・ん〜♪←ジャングル大帝
シャオ>・・・・・
手品師シャオの冒険 第一話 09/28/2007
第一話 12番街のオババの巻
手品師シャオ、只今参上!
トランプとダイヤモンドをちりばめながら
ロンドンの夜空を飛ぶ!!
***
主人公シャオの外見はともかく、中身は純粋な女の子だった。
髪はショートカットで肩幅が広く、背はさほど高くはないが男性に間違えられることが多かった。特に結婚は考えておらず、今は家電量販店で働きながら忙しい生活を送っている。
そして彼女はお客が嫌いで
少し口が悪いだけ。
そんな主人公の小さな冒険、いわば小さな人生を
少しだけお話いたしましょう。
趣味はピアノにギターにハーモニカ。
それから小さなマジック・ショー
以前働いていた遊園地が破綻し、転職して一年弱。
この職場はなんとかやっていけそうだった。
突然怒鳴り込んでくる嫌な客もいるが
その都度職場の皆で励まし合って支え合っていた。
そういう奴らは金さえあれば何をやってもかまわないとでも思っている。
実際、そうではない。
仮に今、目の前に殺してやりたいくらい憎んでいる人間がいるとして
あなたはナイフかピストルを持っている
その憎んでいる人間が突然あなたの目の前に大量の札束を差し出したとしたら
あなたの憎しみは消えるだろうか?
いや
消えないだろう。
(銃声)
(花びらのように舞う札束)
***
シャオの隣の家のおばあさんは、性格の悪さではピカ一だった。
都心なのに家賃が安いのは彼女のせいでもある。その辺りに名を轟かす、「12番街のオババ」もしくはババァとして知られている。また、暴力団か犯罪者と関係があるのか知らないが、左手の小指と薬指の第二関節からがない。ところかまわずわめき散らし、笑った子供も彼女を見ただけで泣き、犬も猫も近寄らない、驚異的な存在である。
そして、最近介護の法律が変わったらしく、次々と介護ヘルパーさんたちがやってくる。ところが、そのおばあさんの悪態に耐えられなくなり、すぐにやめていってしまうのだ。シャオも、泣きながら帰っていくヘルパーさんたちと何度もすれ違ったことがある。
シャオもいい迷惑だった。ギターの音がうるさいだの、通路のバラが自分の家まで伸びてきただの、出ていけだの、引っ越ししろだの、しばくぞ!だの。生ゴミを投げ付けられることもあり、わけのわからないことを怒鳴られたり殴られたり物干し竿で突かれたり・・・それはもう、誰も手に負えないようであった。
しかし、ある時。
それは、あのおばあさんの悪態によく一年近くも耐えたなぁとシャオが思っていた時だった。
その意地悪おばあさんの態度がコロッとよくなったのである。
「・・・?」
うるさく言わないし、言い争いを仕掛けてこない。生ゴミが飛ぶことも階段から突き飛ばされることも噛み付かれることもなくなった。初めはついに死んだかと思ったが、静かになっただけで、生きていることは生きていた。まだ換気扇は回っている。たまにシャオの故郷の料理の香りも漂ってくる。
ふいに鳥の声が、すがすがしく聞こえるようになった。野良猫はベランダで昼寝をし、犬は外で優雅に散歩をしている。
12番街に、平和が戻った。
子供は笑顔で路地を通り、ピンクのベビーカーにはやわらかい日差しが注ぎ込む。レースのカーテンがそよ風にふわりとたなびき、やわらかい朝日が部屋を明るく静かに照らす。
シャオも遠慮してギターの音を控えめに、キーボードもヘッドホンをして演奏するようにしたが、あの変わりようには、不思議なものがあった。外を出歩くにしても無言でうろつくだけ、声をかけても頷くだけ。おかしなくらい悪態がぴたっと止んだ。
・・・何故だ?
そのトリックは、一ヵ月くらい後にわかった。
「おはようございます」
あわててセットした髪に、ミネラルウォーターをタンクから入れ替えた500ミリペットボトル。数本のボールペンとカッターナイフをポケットに突っ込んで、仕事場に出かけて行く時だった。
「あっ、おはようございます」
これから動きだすような町並みと、バスの発車を知らせる鐘の音。小鳥のさえずりと猫の鳴き声が重なり合い、心地よいフィーリングを提供してくれる。そして今日も一日、頑張ろうという気持ちになる。
「これからお出かけですか?」
「あ・・・は、はい」
「どうぞお気を付けて」
この人だったのか、と、シャオは思った。
新しく来たヘルパーさんであろう。ピンクのポロシャツに白いズボンという、何よりも明るい服装。白い肌に自然な感じの頬紅。暗いアパートを背景に、より引き立って見えるとびきりの笑顔・・・
「○○さん、入っていいですか」
そう言ってそのヘルパーさんは12番街のオババの家に入っていく。普通、あのオババの家に入ると思うだけでも鳥肌が立つ。まさしく、12番街のオババの悪態が止んだのは、彼女のおかげだろう。まさしく空から舞い降りた天使、女神、もしくはかぐや姫。
カタン、カタンとシャオは古びた螺旋階段を降りる。時間がギリギリなのはわかっていたが、足取りが妙にゆっくりになり、時折踏み外しそうになる。さびた手摺りの剥げた塗装が手に痛かったが、今はそんなもの気にしない。
まさにあの人が、12番街のオババの悪態を止めたのだ!!
初めて見る、それに顔を合わせたのはあんな一瞬だっのに、吸い込まれるようなあの笑顔。作り笑いではない。作り笑いにしろ、上手く出来すぎている。作り笑いを超越した笑顔なのだ。素敵な人だった。私が男だったなら、バラの花束が何本あったって足りないだろう。手に届かない高嶺の花。彼女には何だって差し上げてもかまわないと思っただろう。
「・・・シャオ」
「・・・はい?リア先輩?」
「ボーッとしてないでレジ打ちなさいよ!」
「あっ、は、はい、いらっしゃいませ」
彼女はシャオの一つ上の先輩、リアルさん。
「ここの店は店員の接客態度が悪いわね!」
「たっ・・・大変申し訳ございませんでした」
ふんぞり返った図体のでかい眼鏡の女。隣に子供を連れていたが、こんな親に育てられる子供が可愛そうだ。
「あーあ。シャオ、またクレーム作っちゃったわね」
そんなことはどうでもいい。いつの時代にしろ、どの国にしろ、一番可愛そうなのは子供たちである。子供たちは産まれる場所、産まれてくる親を選べない。これは、子供の最高の悲劇である。それとは逆に、子供の最高の喜劇は親からの関心であろう。今は女性の社会進出がよく言われ、家は誰もいないからっぽの脱け殻になる。子供は独りぼっちになり、そういう子供たちが集まって非行に走る。そして、年々ますます凶悪化していってるのだ。「女性はなるべく家にいろ」という法律ができたら、少しは治安がよくなるのではないかと思う。
「シャオ、レジ」
まあ、こんなところで言っても仕方のないことである。あんな奴なんか、死んでしまえ。次に店以外で会った時には、通り魔事件を起こしてやる。それまでにはナイフを研いで準備しといてやるから、覚えてやがれ。まあ、クレーム客の顔なんて、よほどのことがない限り覚えていないんだけれど。まあ、それで終わり。これが私のクレームに対するメンタルトレーニング。
そんなことよりも・・・
「レジ!」
あの女性は誰だったのだろう?
第二話 マダム・マドンナの巻に続く
手品師シャオ、只今参上!
トランプとダイヤモンドをちりばめながら
ロンドンの夜空を飛ぶ!!
***
主人公シャオの外見はともかく、中身は純粋な女の子だった。
髪はショートカットで肩幅が広く、背はさほど高くはないが男性に間違えられることが多かった。特に結婚は考えておらず、今は家電量販店で働きながら忙しい生活を送っている。
そして彼女はお客が嫌いで
少し口が悪いだけ。
そんな主人公の小さな冒険、いわば小さな人生を
少しだけお話いたしましょう。
趣味はピアノにギターにハーモニカ。
それから小さなマジック・ショー
以前働いていた遊園地が破綻し、転職して一年弱。
この職場はなんとかやっていけそうだった。
突然怒鳴り込んでくる嫌な客もいるが
その都度職場の皆で励まし合って支え合っていた。
そういう奴らは金さえあれば何をやってもかまわないとでも思っている。
実際、そうではない。
仮に今、目の前に殺してやりたいくらい憎んでいる人間がいるとして
あなたはナイフかピストルを持っている
その憎んでいる人間が突然あなたの目の前に大量の札束を差し出したとしたら
あなたの憎しみは消えるだろうか?
いや
消えないだろう。
(銃声)
(花びらのように舞う札束)
***
シャオの隣の家のおばあさんは、性格の悪さではピカ一だった。
都心なのに家賃が安いのは彼女のせいでもある。その辺りに名を轟かす、「12番街のオババ」もしくはババァとして知られている。また、暴力団か犯罪者と関係があるのか知らないが、左手の小指と薬指の第二関節からがない。ところかまわずわめき散らし、笑った子供も彼女を見ただけで泣き、犬も猫も近寄らない、驚異的な存在である。
そして、最近介護の法律が変わったらしく、次々と介護ヘルパーさんたちがやってくる。ところが、そのおばあさんの悪態に耐えられなくなり、すぐにやめていってしまうのだ。シャオも、泣きながら帰っていくヘルパーさんたちと何度もすれ違ったことがある。
シャオもいい迷惑だった。ギターの音がうるさいだの、通路のバラが自分の家まで伸びてきただの、出ていけだの、引っ越ししろだの、しばくぞ!だの。生ゴミを投げ付けられることもあり、わけのわからないことを怒鳴られたり殴られたり物干し竿で突かれたり・・・それはもう、誰も手に負えないようであった。
しかし、ある時。
それは、あのおばあさんの悪態によく一年近くも耐えたなぁとシャオが思っていた時だった。
その意地悪おばあさんの態度がコロッとよくなったのである。
「・・・?」
うるさく言わないし、言い争いを仕掛けてこない。生ゴミが飛ぶことも階段から突き飛ばされることも噛み付かれることもなくなった。初めはついに死んだかと思ったが、静かになっただけで、生きていることは生きていた。まだ換気扇は回っている。たまにシャオの故郷の料理の香りも漂ってくる。
ふいに鳥の声が、すがすがしく聞こえるようになった。野良猫はベランダで昼寝をし、犬は外で優雅に散歩をしている。
12番街に、平和が戻った。
子供は笑顔で路地を通り、ピンクのベビーカーにはやわらかい日差しが注ぎ込む。レースのカーテンがそよ風にふわりとたなびき、やわらかい朝日が部屋を明るく静かに照らす。
シャオも遠慮してギターの音を控えめに、キーボードもヘッドホンをして演奏するようにしたが、あの変わりようには、不思議なものがあった。外を出歩くにしても無言でうろつくだけ、声をかけても頷くだけ。おかしなくらい悪態がぴたっと止んだ。
・・・何故だ?
そのトリックは、一ヵ月くらい後にわかった。
「おはようございます」
あわててセットした髪に、ミネラルウォーターをタンクから入れ替えた500ミリペットボトル。数本のボールペンとカッターナイフをポケットに突っ込んで、仕事場に出かけて行く時だった。
「あっ、おはようございます」
これから動きだすような町並みと、バスの発車を知らせる鐘の音。小鳥のさえずりと猫の鳴き声が重なり合い、心地よいフィーリングを提供してくれる。そして今日も一日、頑張ろうという気持ちになる。
「これからお出かけですか?」
「あ・・・は、はい」
「どうぞお気を付けて」
この人だったのか、と、シャオは思った。
新しく来たヘルパーさんであろう。ピンクのポロシャツに白いズボンという、何よりも明るい服装。白い肌に自然な感じの頬紅。暗いアパートを背景に、より引き立って見えるとびきりの笑顔・・・
「○○さん、入っていいですか」
そう言ってそのヘルパーさんは12番街のオババの家に入っていく。普通、あのオババの家に入ると思うだけでも鳥肌が立つ。まさしく、12番街のオババの悪態が止んだのは、彼女のおかげだろう。まさしく空から舞い降りた天使、女神、もしくはかぐや姫。
カタン、カタンとシャオは古びた螺旋階段を降りる。時間がギリギリなのはわかっていたが、足取りが妙にゆっくりになり、時折踏み外しそうになる。さびた手摺りの剥げた塗装が手に痛かったが、今はそんなもの気にしない。
まさにあの人が、12番街のオババの悪態を止めたのだ!!
初めて見る、それに顔を合わせたのはあんな一瞬だっのに、吸い込まれるようなあの笑顔。作り笑いではない。作り笑いにしろ、上手く出来すぎている。作り笑いを超越した笑顔なのだ。素敵な人だった。私が男だったなら、バラの花束が何本あったって足りないだろう。手に届かない高嶺の花。彼女には何だって差し上げてもかまわないと思っただろう。
「・・・シャオ」
「・・・はい?リア先輩?」
「ボーッとしてないでレジ打ちなさいよ!」
「あっ、は、はい、いらっしゃいませ」
彼女はシャオの一つ上の先輩、リアルさん。
「ここの店は店員の接客態度が悪いわね!」
「たっ・・・大変申し訳ございませんでした」
ふんぞり返った図体のでかい眼鏡の女。隣に子供を連れていたが、こんな親に育てられる子供が可愛そうだ。
「あーあ。シャオ、またクレーム作っちゃったわね」
そんなことはどうでもいい。いつの時代にしろ、どの国にしろ、一番可愛そうなのは子供たちである。子供たちは産まれる場所、産まれてくる親を選べない。これは、子供の最高の悲劇である。それとは逆に、子供の最高の喜劇は親からの関心であろう。今は女性の社会進出がよく言われ、家は誰もいないからっぽの脱け殻になる。子供は独りぼっちになり、そういう子供たちが集まって非行に走る。そして、年々ますます凶悪化していってるのだ。「女性はなるべく家にいろ」という法律ができたら、少しは治安がよくなるのではないかと思う。
「シャオ、レジ」
まあ、こんなところで言っても仕方のないことである。あんな奴なんか、死んでしまえ。次に店以外で会った時には、通り魔事件を起こしてやる。それまでにはナイフを研いで準備しといてやるから、覚えてやがれ。まあ、クレーム客の顔なんて、よほどのことがない限り覚えていないんだけれど。まあ、それで終わり。これが私のクレームに対するメンタルトレーニング。
そんなことよりも・・・
「レジ!」
あの女性は誰だったのだろう?
第二話 マダム・マドンナの巻に続く