カゴリカ 第六話 06/18/2007
第六話 避難訓練
<ただいまより避難訓練を開始します>
アナウンスが流れる。
<生徒達は先生の指示にしたがってすみやかに校庭に避難してください>
アナウンスは続く。
<出火場所は二階の第一理科室・・・>
「何でやねん!!」
「もうっ!理科室ってばどうしていつもいつも避難訓練のネタ(※)にされなきゃいけないの!?困るわよね!まったく!!」
※ たまに家庭科室
「通算これで46回目だな。記念すべき50回まであと4回。」
「そんなに理科室が危険かしら?」
「危険だから避難訓練のネタになるんだろ。」
「理科室に根拠のない偏見を持ってもらっちゃ困るわ!避難訓練による理科室=危険の先入的イメージがあるから子供たちの理科離れが起こるのよ!!」
硝酸銀水溶液は、この理科室に一番長く居座っている住人なのである。いつからなのかは、誰も知らない。
「そもそもエタノールはともかくメタノールに引火したら大変だろ。」
と、いつもエタノール君に手を焼いているMr.BTBはため息混じりに言った。エタノール君の苦手なものは火気だった。火の近くだと、すっかりやる気がなくなり、弱くなってしまうのである。また、メタノールは引火すると爆発するという大変危険な物質なのである。ちなみに、エタノール君は今、二日酔いでまだ寝込んでいる。
ウ〜〜〜・・・・・
サイレンが鳴る。生徒達の避難する足音が聞こえる。
「ふん、どうせ火事や地震が起きたって助かりっこないさ。」
水槽の中からカエルはつぶやく。
「ハッハッハ、何かありましたか。」
その横で低い声で笑いながら話し掛ける人物がいた。いかにもダンディーな、紳士のような声である。
「ま、俺は両生類だから逃げられねぇってことはねぇけど水槽の中の魚類どもは大変だぜ。」
「そうでしょうね。行動範囲が少ないでしょうから。」
「ああそうだろうよ。火事があったら焼き魚か蒸し焼きだ。地震があっても水槽が割れてひからびて死んじまう。洪水や雷があって停電したら熱帯魚はどうなる?結局強いものだけが助かるのさ。なぁ、そうだろう?生きものってやつは無理矢理連れてこなくても本来いる場所にいるほうがいいんだ。」
「フフフ・・・強いものでも助からない場合もありますよ。」
不気味にそいつは笑う。
「・・・・・」
めずらしくカエルが黙っていた。一言で言い包められた悔しさで黙っていたのだ。そのカエルの話していた相手も、理科室の一住人だった。赤いフードがついたマントで全身を覆っており、口元しか様子が見えないが、肌の色も歯の色も、すべてが赤色のようである。時折見える彼の手も、赤い色をしていた。
「あっ、消防車が来てる。」
硝酸銀水溶液は窓際に寄った。理科室は校庭に面していたので避難の様子がよくわかる。
「フッ・・・ああやって生徒達は燃える理科室を眺めているんでしょうね。」
「カーミン、理科室が燃えるわけないって。」
硝酸銀水溶液は寂しそうな声でポツリとつぶやいた。
「あたしたちも・・・避難訓練しといたほうがいいのかな・・・」
「フフフ、レディ、人間だっていざとなったら慌てるだけでなにもできないさ。優雅に避難訓練でもしてるがいい。」
酢酸カーミンは赤い目で硝酸銀水溶液を見上げる。そして校庭の様子を見下ろす。
「カーミン、理科室が燃えたらどうする?」
「こんな体じゃ、どうにもなりそうにないですよ。」
酢酸カーミン液とは、細胞の核などを赤く染める働きがある。つまり、色を付けて顕微鏡で見るときに見やすくするという訳である。ちなみに彼は触るものすべてを赤く染めていくので、いつもペトリ皿の中にいる。つまりは身長が手のひらサイズな訳である。
「カーミン、火事や地震が起きたら助けてあげるからね。」
「フッ・・・ああ。すまないね。」
酢酸カーミン液は行動範囲もペトリ皿の中だけに限定されていた。なんせ触るものすべてを赤く染めていくのだから・・・
「あたしは理科室から火事が起こるなんて、絶対許さない。」
硝酸銀水溶液ははっきりとした声で言う。
「顕微鏡だって、ガスバーナーだって、試験管だって、みんな大切な理科室の友達だわ。」
「この前一本割れたがな。」
と、カエル。
「それはそれでいいのよ。試験管として活躍したんだから。ふふ・・・殉職警官ならぬ殉職試験管ね!!」
パシッ!
Mr.BTBはハリセンで軽く硝酸銀水溶液の頭を叩いた。
「あいたたた・・・」
「そんな場合じゃないぞ!見ろ!!」
Mr.BTBは反対側の廊下側を指差した。
「オメガ!!」
一斉に振り向く。そして、警戒態勢を敷く。
「何しにきたの?本当に理科室を燃やそうとでも思ってるんでしょう?」
硝酸銀水溶液はオメガの前に立ちはだかった。
「クックック・・・理科室が燃えているところを想像しただけで笑いがこみあげてくるんだよ。」
「何ですってぇ!?」
硝酸銀水溶液は銀のステッキを振りかざし、オメガに電流をかまそうとした。顔を赤くして、今にも怒りが爆発しそうな顔、そして眉間にしわ。
「ククク・・・マドモアゼル、怒るとしわが増えるよ?」
「ミーの口癖を真似するな!!」
硝酸銀水溶液の攻撃はことごとく跳ね返され、まわりの住人達にもいくらか影響があったりした。
「このやろー!!」
「やめろ硝酸銀水溶液!!」
「硝酸銀ちゃん、やめて!!」
気違いじみた硝酸銀水溶液は自分の力を使い果たして疲れ切ってしまっていた。
「クックック・・・」
その様子を笑いながら、オメガは去っていった。
「ちょっと!どうして止めるのよ!!」
泣きながら硝酸銀水溶液は床に座り込み、顔を上げて叫んだ。Mr.BTBは方膝をつき、硝酸銀水溶液に視線を合わせる。
「落ち着けよ。」
硝酸銀水溶液は肩を上げ下げしながら荒く息を立てる。
「奴は人の感情面にも攻撃を仕掛けてくるんだから。」
ヨウ素液も頷く。
「カッとなってムキになったところを狙うんだ。またそれを楽しんでいる。マドモアゼル、泣くのをおやめ。」
そう言われると、逆に涙があふれてきてしまうのである。
「・・・・・」
ペトリ皿の中にいる酢酸カーミン液はただ黙っていた。硝酸銀水溶液を慰めてあげたい言葉はたくさんあったが、自分の体が小さく、行動範囲も少なく、距離も遠かったので、何もできないでいた。
「・・・・・」
酢酸カーミン液はその場に座った。手に強く、握りこぶしを込めながら。
「・・・・・」
隣にいたカエルも黙っていた。
「カーミン、火事や地震が起きたら助けてあげるからね。」
酢酸カーミン液の脳裏に、硝酸銀水溶液の明るい声が響く。
酢酸カーミン液の目から、血のような赤い涙がこぼれた。
避難訓練が終わり、教室に戻る生徒達の足音が聞こえる。
第七話「真夜中の理科室」につづく
<ただいまより避難訓練を開始します>
アナウンスが流れる。
<生徒達は先生の指示にしたがってすみやかに校庭に避難してください>
アナウンスは続く。
<出火場所は二階の第一理科室・・・>
「何でやねん!!」
「もうっ!理科室ってばどうしていつもいつも避難訓練のネタ(※)にされなきゃいけないの!?困るわよね!まったく!!」
※ たまに家庭科室
「通算これで46回目だな。記念すべき50回まであと4回。」
「そんなに理科室が危険かしら?」
「危険だから避難訓練のネタになるんだろ。」
「理科室に根拠のない偏見を持ってもらっちゃ困るわ!避難訓練による理科室=危険の先入的イメージがあるから子供たちの理科離れが起こるのよ!!」
硝酸銀水溶液は、この理科室に一番長く居座っている住人なのである。いつからなのかは、誰も知らない。
「そもそもエタノールはともかくメタノールに引火したら大変だろ。」
と、いつもエタノール君に手を焼いているMr.BTBはため息混じりに言った。エタノール君の苦手なものは火気だった。火の近くだと、すっかりやる気がなくなり、弱くなってしまうのである。また、メタノールは引火すると爆発するという大変危険な物質なのである。ちなみに、エタノール君は今、二日酔いでまだ寝込んでいる。
ウ〜〜〜・・・・・
サイレンが鳴る。生徒達の避難する足音が聞こえる。
「ふん、どうせ火事や地震が起きたって助かりっこないさ。」
水槽の中からカエルはつぶやく。
「ハッハッハ、何かありましたか。」
その横で低い声で笑いながら話し掛ける人物がいた。いかにもダンディーな、紳士のような声である。
「ま、俺は両生類だから逃げられねぇってことはねぇけど水槽の中の魚類どもは大変だぜ。」
「そうでしょうね。行動範囲が少ないでしょうから。」
「ああそうだろうよ。火事があったら焼き魚か蒸し焼きだ。地震があっても水槽が割れてひからびて死んじまう。洪水や雷があって停電したら熱帯魚はどうなる?結局強いものだけが助かるのさ。なぁ、そうだろう?生きものってやつは無理矢理連れてこなくても本来いる場所にいるほうがいいんだ。」
「フフフ・・・強いものでも助からない場合もありますよ。」
不気味にそいつは笑う。
「・・・・・」
めずらしくカエルが黙っていた。一言で言い包められた悔しさで黙っていたのだ。そのカエルの話していた相手も、理科室の一住人だった。赤いフードがついたマントで全身を覆っており、口元しか様子が見えないが、肌の色も歯の色も、すべてが赤色のようである。時折見える彼の手も、赤い色をしていた。
「あっ、消防車が来てる。」
硝酸銀水溶液は窓際に寄った。理科室は校庭に面していたので避難の様子がよくわかる。
「フッ・・・ああやって生徒達は燃える理科室を眺めているんでしょうね。」
「カーミン、理科室が燃えるわけないって。」
硝酸銀水溶液は寂しそうな声でポツリとつぶやいた。
「あたしたちも・・・避難訓練しといたほうがいいのかな・・・」
「フフフ、レディ、人間だっていざとなったら慌てるだけでなにもできないさ。優雅に避難訓練でもしてるがいい。」
酢酸カーミンは赤い目で硝酸銀水溶液を見上げる。そして校庭の様子を見下ろす。
「カーミン、理科室が燃えたらどうする?」
「こんな体じゃ、どうにもなりそうにないですよ。」
酢酸カーミン液とは、細胞の核などを赤く染める働きがある。つまり、色を付けて顕微鏡で見るときに見やすくするという訳である。ちなみに彼は触るものすべてを赤く染めていくので、いつもペトリ皿の中にいる。つまりは身長が手のひらサイズな訳である。
「カーミン、火事や地震が起きたら助けてあげるからね。」
「フッ・・・ああ。すまないね。」
酢酸カーミン液は行動範囲もペトリ皿の中だけに限定されていた。なんせ触るものすべてを赤く染めていくのだから・・・
「あたしは理科室から火事が起こるなんて、絶対許さない。」
硝酸銀水溶液ははっきりとした声で言う。
「顕微鏡だって、ガスバーナーだって、試験管だって、みんな大切な理科室の友達だわ。」
「この前一本割れたがな。」
と、カエル。
「それはそれでいいのよ。試験管として活躍したんだから。ふふ・・・殉職警官ならぬ殉職試験管ね!!」
パシッ!
Mr.BTBはハリセンで軽く硝酸銀水溶液の頭を叩いた。
「あいたたた・・・」
「そんな場合じゃないぞ!見ろ!!」
Mr.BTBは反対側の廊下側を指差した。
「オメガ!!」
一斉に振り向く。そして、警戒態勢を敷く。
「何しにきたの?本当に理科室を燃やそうとでも思ってるんでしょう?」
硝酸銀水溶液はオメガの前に立ちはだかった。
「クックック・・・理科室が燃えているところを想像しただけで笑いがこみあげてくるんだよ。」
「何ですってぇ!?」
硝酸銀水溶液は銀のステッキを振りかざし、オメガに電流をかまそうとした。顔を赤くして、今にも怒りが爆発しそうな顔、そして眉間にしわ。
「ククク・・・マドモアゼル、怒るとしわが増えるよ?」
「ミーの口癖を真似するな!!」
硝酸銀水溶液の攻撃はことごとく跳ね返され、まわりの住人達にもいくらか影響があったりした。
「このやろー!!」
「やめろ硝酸銀水溶液!!」
「硝酸銀ちゃん、やめて!!」
気違いじみた硝酸銀水溶液は自分の力を使い果たして疲れ切ってしまっていた。
「クックック・・・」
その様子を笑いながら、オメガは去っていった。
「ちょっと!どうして止めるのよ!!」
泣きながら硝酸銀水溶液は床に座り込み、顔を上げて叫んだ。Mr.BTBは方膝をつき、硝酸銀水溶液に視線を合わせる。
「落ち着けよ。」
硝酸銀水溶液は肩を上げ下げしながら荒く息を立てる。
「奴は人の感情面にも攻撃を仕掛けてくるんだから。」
ヨウ素液も頷く。
「カッとなってムキになったところを狙うんだ。またそれを楽しんでいる。マドモアゼル、泣くのをおやめ。」
そう言われると、逆に涙があふれてきてしまうのである。
「・・・・・」
ペトリ皿の中にいる酢酸カーミン液はただ黙っていた。硝酸銀水溶液を慰めてあげたい言葉はたくさんあったが、自分の体が小さく、行動範囲も少なく、距離も遠かったので、何もできないでいた。
「・・・・・」
酢酸カーミン液はその場に座った。手に強く、握りこぶしを込めながら。
「・・・・・」
隣にいたカエルも黙っていた。
「カーミン、火事や地震が起きたら助けてあげるからね。」
酢酸カーミン液の脳裏に、硝酸銀水溶液の明るい声が響く。
酢酸カーミン液の目から、血のような赤い涙がこぼれた。
避難訓練が終わり、教室に戻る生徒達の足音が聞こえる。
第七話「真夜中の理科室」につづく
理科室が燃えてる設定が多いですよね、防災訓練とかって。たまに家庭科室で料理実習中に出火とかも。
僕は学生時代に「たまには音楽室にも火の手を!」と発言したことがありましたが……。
次々と奇っ怪な展開に!カエルはちゃんと対応しているんでしょうか?ちょっと精神的にサンドバッグ状態に陥りやすい雰囲気を醸し出しているカエルの哀愁ある背中の丸み。
今日も煙草の煙が目に滲みますぜ……。
僕は学生時代に「たまには音楽室にも火の手を!」と発言したことがありましたが……。
次々と奇っ怪な展開に!カエルはちゃんと対応しているんでしょうか?ちょっと精神的にサンドバッグ状態に陥りやすい雰囲気を醸し出しているカエルの哀愁ある背中の丸み。
今日も煙草の煙が目に滲みますぜ……。
楓さん>じゃじゃ丸!ピッコロ!ポロリ!!←これならわかります(違うって)
カーミン、この次どうしようかな。けっこうクールビューティーなキャラという設定なんだけどね。切ないっす。
次回、念願のスケルトン登場。そして奴が登場します。太郎・・・なんかいいネタありませんかね←こら
Takagaさん>一度だけ、本当に一度だけ、職員室が火事(つまり避難訓練のネタ)だったことがあります。どこから放送かけてるんだよ!みたいな。
あと、図書室だったことも。燃えそうなものがたくさんありますしね。
カエル、残念ながら次回はお休み!ううう、カエルの後ろ姿を想像しただけでも切なくなってくる〜!!わぁぁぁん!!
カーミン、この次どうしようかな。けっこうクールビューティーなキャラという設定なんだけどね。切ないっす。
次回、念願のスケルトン登場。そして奴が登場します。太郎・・・なんかいいネタありませんかね←こら
Takagaさん>一度だけ、本当に一度だけ、職員室が火事(つまり避難訓練のネタ)だったことがあります。どこから放送かけてるんだよ!みたいな。
あと、図書室だったことも。燃えそうなものがたくさんありますしね。
カエル、残念ながら次回はお休み!ううう、カエルの後ろ姿を想像しただけでも切なくなってくる〜!!わぁぁぁん!!
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酢酸カーミン・・・
使ったなぁ、そういえば・・・
細胞核を見るのに使った使った(笑
でも、非力だ。
何て無力なんだ。。。
それはそうと、硝酸銀水溶液が一番長く理科室にいたとは意外でした。てことは、先祖代々のカエルを見てきたわけなんですね。あっはは。
はっ!!!
次回、真夜中の理科室・・・
もしや、いよいよ満を持して太郎登場?!
ちゃんちゃらちゃんちゃらり〜
ズタズタズタッ
ぷぷぷぷぷぷぷぷ・・・
ズタズタズタッ
ちゃちゃちゃちゃんちゃらちゃ〜ん、ちゃちゃちゃちゃんちゃらり〜♪
・・・忍者じゃじゃ丸君(古っ、てか分かるか!!