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怪物紳士の歌 第三話  11/03/2007  
第三話 鳥人マルコ

テドロ・ガルボがピーターと出会ったその日、また別の角度からピーターを見ていた人物がいた。

「やれやれ」

下町、スラム街などを無視したかのようにそびえ立つ一本の高層ビル。ここは、工場の経営者、または都会から転勤してきた人間が住んでいるビルである。厳重なセキュリティシステムで管理されており、衛生、環境、何を取っても最高度の場を提供してくれた。

「そうか、ついに見つけたぞ、ピーター・ベンジャミン」

エレベーターから出るとその男はカードキーをドアに差し込み、暗証番号を入れる。そして部屋に戻る。ビルの最上階にある、一番高級な部屋である。

「今夜も天気がいいな」

少年はだだっ広い部屋の片隅にある窓を開ける。金髪の緑の目をした少年の手に、一羽のカラスが飛び降りる。

「そうか。カフェの三階にいるのだな」

カラスは飛び去っていく。

「フフフ・・・」

豪華なシャンデリアに、羽毛の布団。カーペットにソファー、絵画。

その男は獲物を狙う鳥のように、町を見下ろしていた。

***

いつものようにルイスが歌い終わると、夜遅く片付けをしている二人。

「テド、たまには手伝ってよ」
「や」
「下手くそなギターばかり鳴らしやがって」
「うるさいなぁ、練習だよ、練習!」

テドロはルイスを兄貴として慕っている。過去に大雨があったとき、ルイスのカフェに雨宿りさせてもらい、親切にしてもらったそうだ。

「ガキはもう寝る時間だぞ」
「そうだよテド、おばあさんが心配するよ?」
「やなこった」

テドロはルイスのギターをバランバランと弾きながら、色々試してみる。

「耳ざわりだ。ルイスの義手のほうがよっぽど上手い」
「悪かったな!」

その日ピーターは特に就職活動もせずふらりふらりと街を行ったり来たり山を行ったり来たりしていた。メカ・インディオの手がかりはその日、何もみつからなかった。

「貸してみろ」
「やだよ」
「貸せっての」
「僕のギターで遊ばないでよ」

ピーターもピーターで楽器が恋しいのである。

そんなやりとりを店の外から見ていた人物がいた。ピーター・ベンジャミンを探している、金髪の緑の目をした少年である。

「・・・・・」

「ガキはおもちゃのラッパで十分だろ!」
「るせー!てめーこそ鍵盤ハーモニカがお似合いなんだよ!」
「あぁっ、僕のギターがぁっ!」

「・・・・・」

少年はいつ話を切り出そうか悩んでいた。

「失礼、店はまだ開いていますか?」

・・・と、よそよそしく尋ねるのだから。

「?」

きょとんとこちらを向いた三人。

「あ、もう閉店ですか」

そこにはこの町に似合わぬ金色の髪に白い肌、緑の目。暗い町並みに引き立って見える。

「あ、でも軽い飲み物くらいなら」
「ではレモンティーを」

ルイスは立ち上がり、コップを棚から取り出した。男は厨房側のカウンターに着く。

「見かけねぇ顔だな」
「それもこんな時間に」

テドロとピーターは不思議がっていた。

「どうぞ」

ルイスがレモンティーを差し出すと、その男は驚いた。

「あなた、手が不自由なんですね」
「・・・・・」

男はチップを渡そうとしていたコインパースを閉じ、札入れを開け、紙幣を渡した。

「グラシァス」
「ところで聞きたいのだが・・・」
男はルイスに近づく。

「この町にピーター・ベンジャミンがいるそうだな」

「!」
「!」
「!」

ピーターもテドロも、聴力は悪くなかった。二人とも普通の人間とはちょっと違う奴らなので、そういうことには敏感である。

「おや、聞いてはいけないことを聞いてしまいましたか」
「誰だお前!」
テドロは身を乗り出した。彼自身の能力で、奴から何か違う波長を感じ取っていたらしい。

「やめろ、ガキは引っ込んでろ」
ピーターはテドロの前に立った。

「私だが、何の用だ」

男は椅子に座ったまま、体の向きだけを変えてこちらを向いた。

「メカ・インディオ退治をしているらしいな」
「そうだ」
「何か手がかりはつかめたのか?」
「どういうことだ」

「わたしも協力しにきただけさ」

「何故」
「敵討ち」

「誰の」
「兄のだ。失礼、名刺を」
ピーターは名刺を受け取った。

○○工業
営業 マルコ・トロント

「コンビナートの会社だな」
「父親が社長さ」
「その後継ぎがメカ・インディオに殺されたわけか」
「そう。私はその次男」
「いつ殺された」
「一週間前」
「何故私がここにいることがわかった?」
「風の便りさ」
「?」
「鳥たちの」

「鳥だと?」

「そうさ。私にはその能力がある」
「これは驚いたな」
「君の存在を社会に曝け出すようなことはしない。私が興味のあることはメカ・インディオを破壊することだけだ」
「・・・・・」
「あなたの力をお借りしたい」
「まだお前を完全に信用することはできない」
「・・・・・」
マルコは黙ったまま辺りを見回した。ステージに机、椅子、カウンター、あといるのはピーターとテドロ、左隣にルイス。
「二人は彼について知っているのか?」
「知ってるさ。昨日突然やってきた怪物男」
と、ルイス。
「ケッ」
「そうか」
マルコは右手の袖を捲くし上げ、手の甲をピーターに見せた。
「見てくれ」
「あっ」
するとみるみるうちに手がひからびたように茶色く細くなり、かぎ爪のように爪が鋭く伸びてくるんと曲がっていた。
「お前もか」
「あやうく本物の鳥になるところだった」
マルコは続ける。
「メカ・インディオはとにかくコンビナートを爆発させることを企んでいる。本拠地はB地区廃家電処理場つまりはゴミ捨て場」
「鳥ぐらいしか入れなさそうなところだな」
ピーターは鼻で笑った。
「何かあったら携帯に連絡してくれ。とにかく時間はない」
「ああ。だがしかし・・・」
「?」
「誰も携帯電話なんて持っていないんだよ」
「・・・ならば明日また来る」
と、マルコは去っていった。

***

翌日、ピーター宛に小包みが届いた。と、言うよりも、かしこまったスーツの男が、リムジンに乗って届けにきたのだ。

「トロントさんからです」
「?」

受け取ったのはルイスだった。一人でやっと持ちきれるくらいの、大きくて縦長の箱だった。
「なんだこれ」
「どうした?」
「昨日の人から」
中を開けると・・・

「うわっ」
「えっ」

段ボールを開けると、綺麗な色をしたギターが入っていた。

「ギターだ・・・」
「金持ちのやることはわからん」
「なんか弾こうか」
「そうだな。ここに来てからまともに楽器も弾けていない」

ルイスは笑った。ピーターは黙ったまま調弦をし、顔を上げた。ぱららららん、と、ギターが鳴る。

「何を弾くんですか?」
「リクエストは?」

「スタンド・バイ・ミー」
「いい曲だ」

前奏・・・

「When The Night・・・」

昼間なのになんか合わない曲だとピーターは思ったが、ルイスのリクエストには答えたかった。

そしてその日の夜こそまさしく、ピーターの命が狙われた。

第四話「闇の新聞記者」につづく
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ちょっと不穏なマルコさん。一瞬敵かと最初思ったら仲間になりたかったんですね。
彼も、体を変えられていて。
ででで、でも!
最後の最後に、

「そしてその日の夜こそまさしく、ピーターの命が狙われた」

いやぁぁぁ茉莉さん!!
気になるところでお預け;;
ピーター様!!ピーターさまぁぁぁ
kazu osino  11/03/2007 Sat URL [ Edit ]
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うふ。私はいつでも気になるところで次回へつづく。
ピーターよりもルイスが危険です。ピーターはきっと無事です。
がんばれ、一般ピーのルイス!!
さて。新しく出てきたテドっちとマルコ、この二人、がんばってほしいところです。ふふふ。
茉莉  11/04/2007 Sun URL [ Edit ]
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ああ、気になるところで出社しなければ(泣)
順調に仲間が増えていると思ったら、ピーターに危機迫るですね!
マルコ、いいなあ、鳥の声が聞けて……
タイトルと最後にすごく引きがあっていいです♪

しかしメカ。
相当うらみつらみを背負ってんな。
滅多打ちにされそうだ。大丈夫かメカ(心配してはいけない)
史間  01/22/2008 Tue URL [ Edit ]
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おぅ、今日は休日の茉莉です。
そうそう、順調かと思いきや、今度はまたやっかいな奴らも登場します。
一番かわいそうなのは巻き添え食らったルイスです。
マルコ、そう言えばあまり活躍がないなぁ。
ま、いっか(え)
姜(一応・・・)  01/22/2008 Tue URL [ Edit ]
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