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怪物紳士の歌 第六話  11/09/2007  
第六話 ルーク・トロント事件

「あなたの左手までちょん切るつもりはないわ」

ホテルに向かう車の中、後部座席の左隣に座ったアイ・エッシャーはルイスに言う。真っ赤なドレスに、白くて長い足を組んでいる。その足先には、真っ赤なハイヒール。この足でよく追い掛けられたなぁと思うほど踵の高いヒール、そして傷は一つもない。
「警察がそんなことするわけないじゃないのよ」
と、アイはケラケラと笑う。
「このくらいまで脅しておかないと奴は出てきそうにないからね。ま、安心して頂戴。あなたをひどい目にはあわせたりはしないから」
「・・・・・」
ルイスは隣で黙っていた。流れてゆく町並みを見つめながら。

「今まで大変だったでしょう」

アイはルイスに言う。

「義手は私が弁償するわ。本当にごめんなさい」
「いえ・・・スペアがありますから」
アイは小さく笑った。
「あなたこそ、仕事柄大変でしょう」
ルイスはちらっとアイの方を見る。
「・・・ええ。まあ、でもあなたよりは」

沈黙の時が流れる。車のエンジン音と、ウインカーの音以外は何も聞こえない。時折アイの溜め息と、足を組み替えたりするのが目に入るだけ。

「あっ、そうだ」

突然、ルイスは思い出したように声を上げた。
「何か?」
驚いてアイは振り向く。
「あなたたち、警察さんですよね」
ルイスは真剣な目付きでアイを見る。アイはなんだ、そんなことかと面倒くさそうに答える。
「そうよ。警察さんに何か用?」

「教えてほしいことがあるんだけど、一週間位前にコンビナートの社長の息子が殺されたっていう事件、犯人は捕まったんですか?」

つまりは、マルコ・トロントのお兄さんの件である。マルコが言うには、兄貴がメカ・インディオに殺され、仇を打つために彼はこの町へやってきたのだ。ちなみにコンビナートの本社は都会にある。

「社長息子暗殺事件ね。あれは弟のマルコ・トロントに容疑がかけられているわ。容疑が固まり次第逮捕ね」

「何」

「本人は容疑を否認しているけど、彼は第一発見者でもあるしその当時彼の精神状態も錯乱していたみたいだからね」

「精神状態が錯乱・・・?」

ルイスはマルコが言っていた「あやうく本物の鳥になるところだった」という言葉を思い出した。自分のひからびたような手を見せながら・・・
「何か知っているの?」
「あ、いや・・・」
「まあ、時間の問題ね」

そうだな、時間の問題だな、あはははは・・・と、いうわけにもいかず、このままだとメカ・インディオはどうなる?メカ・インディオを野放しにしていて良いのか?

「警察はメカ・インディオの存在を信じていますか」
アイは黙った。
「否定はしていないし、肯定もしていないわ。」
「・・・・・」
「でも嘘でしょ」
「少し・・・ホテルで話をしませんか」
アイは車に付いているデジタル時計に目をやる。十時三十二分、まだ、時間はある。
「ええ。いいわよ」

***

「あなた、お名前は?」
「ルイス・ダイアモンド」
「その事件について知っていることがあったら教えて頂戴」

アイは当初ルイスを人質にするつもりはなく、彼とレストランで話そうかと思ったが、事件についてルイスが何か話を持っていそうだったので自室に入れた。特に華美な装飾はなく、普通のビジネスクラスの部屋だった。ルイスは窓際の椅子に腰掛け、カーテンを開け外を眺める。コンビナートの夜景がちらちらと綺麗に光っている。あの下で、昔の同僚たちは夜勤をしているわけだ・・・

コトリ。

ハッとして顔を上げると、アイは水の入ったコップを差し出していた。ただガラスのテーブルにコップを置いただけだったが、ルイスは過剰にびっくりしてしまった。
「何か他の飲み物がよかったかしら。」
「いえ・・・」
ルイスの向かいにアイは座る。
「ピーター・ベンジャミンとどこでどう知り合ったの?」
「店のお客だよ」
「そう、マルコ・トロントのことも何か知ってるの?」
「彼もただのお客」
「メカ・インディオは?」
「見たことがないからわからない」
「まあそうでしょう」
「コンビナートを破壊すると言ってる」
「誰が」
「メカ・インディオ」
「誰から聞いたの」
「ピーター・ベンジャミン」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ピーター・ベンジャミンとメカ・インディオ、何か関係あるの?」

「・・・・・」

「呪いをかけられたと言っていた」
「は?」
「マルコ・トロントの精神状態がおかしかったのもメカ・インディオのせいだ!マルコは自分の兄はメカ・インディオに殺されたと言っていた」
「そうなの?」
「うん」
「馬鹿馬鹿しい」
「僕もよくわからない」

「・・・・・」

***

一方ピーターは当初の計画通り?南へ向けて夜空を行った。ルイスが人質になったのも知らず、ただひたすらがむしゃらに南へ一直線である。

「あっ」

そのまた一方で、自室に帰ったマルコは、ビルの最上階から町を見下ろしていた。

「確かあの子は」

遠目が利くマルコは、街を行くテドロを見つけたのだ。

「行くか」

マルコは上着をハンガーに掛け、ネクタイを緩める。そしてカッターシャツを片手に、背中から生えた白い翼を広げ、夜空を滑空した。

「!?」

突然の強い風に、屋根の上にいたテドロは目を瞑った。

「すまない、私だ」
「お前は・・・」

目を開けると、金髪の男が、翼を広げて立っていた。
「空から見つけたんで降りてきた。ピーター・ベンジャミンはどうしてる」
「わからない。それより大変なことが起こった!ルイスが捕まったんだ!さっき車で連れていかれるのを見た!」
「捕まった・・・って、誰にだ?」
「警察だ」
「警察だと・・・!?」
マルコはしまったという気難しい顔をし、翼をしまい、シャツを着た。
「何かあったのか?」
「私に殺人容疑がかけられている。それこそ本来メカ・インディオに殺された兄貴のな」
「・・・・・」

「今晩は」

「!!」

二人向かい合っているすぐ横から声がした。
「新聞記者のペッパー・オースティンと申します。取材に応じていただけませんか」

「私に何の用だ」
マルコは冷たく言い放つ。

「君たちの友達が警察に捕まった。午前零時にピーター・ベンジャミンをロイヤルホテルのフロントへ連れてこいということだ。さもないと彼の左手も引きちぎれる」
「何」
「まあルーク・トロントの件でも警察はあなたを逃がしはしないでしょう」
「誤解だ!私は兄を殺してなんかはいない」
「私が伝えるところは以上だ」
新聞記者は二人に背を向けて帰ろうとした。

「待てよ」

呼び止めたのはテドロだった。新聞記者は振り返る。
「お前、ただの新聞記者じゃないだろ」
「何か?」

「前から変な波長を感じていたんだ!お前、女だろ!」

「えっ」
マルコは小さくつぶやいた。月明かりに照らされる顔を改めて見ると、濃い眉毛に長いまつげ。肩幅は広いが、低い声さえなければ、男性とも女性ともとらえられる顔立ちだった。

「あら、ばれちゃったか」

と、言うなり手を口に入れ、何かを取り出した。おそらく、変声装置のようである。

「ウフフ・・・やっぱりあなたたちは普通の人間ではなさそうね」
不気味に高い声。
「お前もな」
「どうしてわかったの?」
「あとお前たち、二人いるだろ」

「そうよ。私は兄さんに似せて作られた双子の妹、レーダーよ。レダって呼んで」

第七話「謎の女、レダ」につづく
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レダ、作られたのか。
マルコには殺人容疑がかかっているし、続き読みたいですけど、本日はここで退散です><

アイもレダも、女性がかっこいいなぁ〜どんな波長が出ているのだろう(ヘンタイ発言)
アイはルイスに何もしないようで、よかったです(ほっ)
ルイス、警察さんって、かわいいなぁ…
史間  02/05/2008 Tue URL [ Edit ]
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そうです。この二人は最後まで秘密です。
マルコ、あれからちゃんと容疑晴れたのかなぁ?←え
かっこいい女性、今までの作品にはあまり登場しなかったのでここでどかんとやってもらおうと言うことで登場させました。
ルイちゃん、無事で何よりです。ルイちゃんはこれからも活躍しますのでお楽しみに!!
姜 茉莉  02/05/2008 Tue URL [ Edit ]
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