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怪物紳士の歌 第十話  11/25/2007  
第十話 コンビナートのゴーストタウン

「ぐわっ!!」

少女の口からは二、三センチはあるかというほどの太い牙が生えていた。幸いピーターも長袖だったので血が出ることはなかったが、深く食い込んでいるので痛みがひどい。
「ぐっ」
ピーターは少女を振り払った。ところが、少女はひるむことなくピーターを攻撃する。危うく顔すれすれのところをウロコまみれの手が飛んできたが、ピーターはしゃがんでかわした。
「ち、ちょっと!!」
アイはピストルを構えるわけにもいかなかった。相手は民間人だ。しかし少女はピーターに対する攻撃をやめない。よりいっそう獰猛にピーターに食らい付いていく。
「ぎゃぁっ!」
ピーターはみぞおちを蹴られ、地面に倒れた。背後に壁があったので、後頭部を強く打った。
「くっ・・・」
「ピーターっ!!」
アイはピーターに駆け寄った。ところが、アイはピーターの体に異変があることに気が付いた。
「よせ・・・」
見るとピーターのこめかみあたりから、羊のような角が生えていた。肌は青白く、所々オレンジ色の斑点がある。目は鋭く、手先からは爪が鋭く伸びている。
「えっ?」
アイは初めて見るピーターの豹変に驚いた。
「どういうこと!?」
「説明は後だ」
ピーターは体勢を立て直し少女の左手を掴み、左手でみぞおちを軽く殴った。
「うっ」
少女は生気を失いへろへろとその場に屈み込んだ。とたんにピーターもその少女も、元の人間の姿に戻った。
「ち、ちょっと!あなたたち、いったい何よ!?」
「わかっただろう、アイ、これがメカ・インディオの呪いだ」
見ると少女は地面に座り込み泣いていた。
「お、おいおい・・・」
ピーターとアイは屈み込む。
「す、すまない、殴ったりして悪かった」
「ごめんなさい・・・」
「君もメカ・インディオに呪いをかけられたのか」
「そうよ」
「感情まで制御できなくなるほどやられてるとはひどいな」
「本当にごめんなさい・・・」
「謝らなくていいよ。君は悪くないさ。それにしても、メカ・インディオは何を考えているんだろうか」
「この街を破壊することよ」
「やっぱりそうか」
「そう。そして人間をいろんな生きものに変えていくんだわ。そしてこの街を自然界と一体化させようとしている」
「何?」
「メカ・インディオは人間が苦しむのを見て喜ぶの!私もあやうく本物のピラニアになるところだったわ!!」
「こんな風になったのは君だけか?」
「わからないわ・・・でも精神的な病気で入院した人を何人か聞いたことがある」
「ほかにも知っていることがあったら教えてくれ」
「そうね。なにかメカ・インディオに関する情報があったら教えて頂戴」
少女は顔を上げる。
「私は一年近く前にこうなったのよ。メカ・インディオに突然襲われて。初めの方はあまりひどくなかったの。でも、だんだん自分の感情まで制御できなくなって・・・たぶん、徐々に体をむしばんでいく呪いだわ!このまま行くと本当に魚になっちゃうわ!お願いです!助けてください!!」
少女は二人の前に手を組んですがった。アイは突然のことにとまどい、険しい表情を見せたが、小さくほほ笑み、少女の背中をさすった。
「あなた、お名前は?」
「華蓮・・・カレン・ホセ」
「いい名前ね。あたしはアイ。こっちはピーターよ。メカ・インディオの居場所か何か手がかりになることはないかしら?」
大分驚きと緊張がほぐれたせいか、アイは華蓮に話し掛ける。その、アイの真剣な目付きにピーターは不思議そうな目でその様子を見ていた。昨日はひどく疑ってかかっていたのに・・・

「ゴーストタウンにいると思うわ」

「ゴーストタウン?」

ピーターとアイは聞き慣れない言葉にきょとんとした。
「どこにあるの?」
「ゴミ捨て場とお墓の近く」
「マルコが言っていた場所の近くだな」
「案内してもらえるかしら」
「ちょっと聞いてくるわ」
華蓮は笠を拾い上げ、店の裏口から中へ入り、しばらくして出てきた。
「夕方までならいいわ」
「ごめんなさいね、突然に」
「車を出すわ」
「えっ、あなた、車運転できるの?」
「仕出しにも行かないといけないから」
華蓮に案内され細い道をしばらく歩くと、店から少し離れた車庫に来た。ガラガラという音を立てて華蓮はガレージのシャッターを開け、黄土色をした後ろが荷台の、四人は乗れそうな大きすぎることなく中くらいのトラックを出した。華蓮は二人を後部座席に乗せると、運転席に乗り込み、ドアを閉じる。
「ゴーストタウンね・・・」
アイがぽつりとつぶやく。
「ええ。コンビナートができたばかりの時に建てられた住宅街なの」
と、華蓮は答える。
「比較的新しいのね。ゴーストタウンなんて言うからすっかりアメリカの西部劇なんかを思い出しちゃったわ」
「今はもう新しいビルや宿泊施設が整って・・・近いうちに取り壊されて更地になると思うわ」
「・・・・・」
そしてさらに南へ行く三人。車が進むたびたびだんだんと山道に入り、人気が少なくなっていくのを感じる。

「レーダー、二人は車に乗り込んだ。至急、車チャーター頼む」

<了解>

ピーターたちと華蓮のやりとりをどこからどこまで見ていたのかわからないが、街の影から一人の男が現われる。長い天然パーマの、例の新聞記者だった。

「黄土色をしたトラックだ。車体番号XX-XXXX」

<了解。至急車で向かう>

「了解」
男はマイクを隠し、小さくあくびをした。少し食べ過ぎた。

「おい」

「?」
後ろから声をかけられその男は振り向いた。
「どっちだ?女か?」
「あいにくだが、私は男の方だ」
と、ペッパーは口を笑わせる。
「君は?確か昨夜の」
「テドロ・ガルボだ。今学校が終わって一目散に駆け付けてきたんだが」
「ああ、ちょうど今ピーターとアイが車で出たところだ」
「ルイス兄貴は?」
「さあ?朝から見ていないがね」
ただ単に寝坊しているだけである。
「そうか・・・あの金髪の男は?」
「昼ご飯に一度帰ったらしいぞ」
「これからどうするつもりだ?」
「私は二人を今から追い掛ける予定だ」
「追い掛ける・・・って、居場所はわかるのか?」
「車に小型の探査機をつけた。これでどこに行こうとも居場所がわかる」
ペッパーは左腕にナビのようなものを隠してあり、ボタンを操作すると、袖を正した。
「メシは食ったのか?」
「まだ」
「なら私がおごろう」
ペッパーは商店街で適当にささっと買い物をすると、レダからの通信を受け取って、広い道に来た。

「お待たせ、坊や」

赤いオープンカーに、黒い車のシート。そして運転席には肌の白い、ほっそりとしたサングラスをかけた女性。ウェーブのかかった髪をオールバックにして後ろで束ねている。真っ赤な口紅に、黒い皮の上下、ヒールの高いブーツ。
「どうしたの?坊や」
「あ、い、いや」
テドロはレダの姿に驚いた。昨夜見た姿とは打って変わって女性らしい。
「レダ、南に向かって飛ばしてくれ」
「はぁ〜い」

そしてペッパーは助手席に、テドロは後部座席に乗り込んだ。テドロはペッパーに買ってもらったピーナッツを食べながら思った。女性は、化けるものだと。

第十一話「少女ケーナ」につづく
 | 怪物紳士の歌  | TB(0)  | CM(4) | Page Top↑
女性は化けるんですよね。
君も気をつけた方がいいよ、テドロ坊や。

ところで、

メカインディオの呪いって、進行性なんですね。
うう、それはちょっと嫌だな。
しかもうよりによってピラニアですからね。汗
楓  11/26/2007 Mon URL [ Edit ]
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はい、怖いです。気をつけましょう。
でもまだお目当てのメカ・インディオは登場しません(どーん)
次の次ぐらいに出そうかともくろんでいます。
次回の話はルイちゃんがメインです。
あー、この話はどこまで行くのだろうか・・・
茉莉  11/26/2007 Mon URL [ Edit ]
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管理者様

    ブログがあってよかったですね。うらやましいです。わたくしにはブログを見るけど、書けません。(怠け者だから...^^;)けれどそんなわたくしもブログがほしいなぁ…。ある日、趣味として、ホームページを作ってみました。自分の好きなコレクション(水晶、ビーズ、綺麗な宝石など)を全部載せて、同じ趣味をもっている方々とシェアしたいのです。日にちを経って、なんとネットショップに変身した。でも、友たちを作りたいのです。
    このようページリンクをあなた様のブログに載せさせて頂きますでしょうか。もしよろしければ、ご登録いただき、即時に300円のお買い物券を差し上げていただきます。(ご恩返し...)
    では、ご回答を心待ちにしております。
Eちゃんの水晶宮  11/26/2007 Mon URL [ Edit ]
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個人的にビーズアクセサリーとか水晶とかあまり興味がないのでせっかくですけどリンクはお断りします。(><)
どうぞ悪く思わないでくださいね。
私なんかよりもっと素敵なブログはまだまだたくさんあります。宣伝もよく思う方と迷惑に思う方もいらっしゃいますから、ほどほどに・・・。
茉莉  11/26/2007 Mon URL [ Edit ]
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