怪物紳士の歌 第十三話 12/16/2007
第十三話 爆発跡
まさにその爆発が起きるという頃、ピーター達を乗せた車は、ゴーストタウンに来ていた。
「ここよ。きっと奥にいるわ」
カレンはトラックを止めて入り口に敷かれてあるコーンを退かした。
「入っていいの?」
「誰も来やしないわよ」
周りは普通に森。右にしばらく行けば湖が見える。そして来た道を少し戻ればゴミ捨て場。前に広がるのは自然の森を切り開いて建てられたマンション群。おそらく昔は白くて綺麗な外装だったが、今では壁は汚れ、ツタ植物が這っている。窓ガラスは割れ、建物自体にも亀裂が入っており、確かに危険な様子である。
「警察には言わないでね」
「あ、ごめん、あたし、警察なの。すっかり言うの忘れてたわ」
ピーターとのおしゃべりに慣れてきたせいであろう、すっかり自分が警察であることを忘れていた。
「そう・・・」
「かまわないわ。進んで頂戴」
アイはゴーストタウンの先を睨む。長く続く暗い建物たち。住宅だけでなく、昔に商店やレストランがあったような面影。ざっくばらんに生えた雑草、ひっぺがえされたアスファルト。
「決着を付けようじゃないのよ。その、メカ・インディオとやらと」
その時、一匹の猫が目の前を通り過ぎた。
「ア、アイ・・・」
ピーターはその猫が通った後を見て、驚いた。
「冗談じゃないぜ・・・ここは墓場だ!」
「!!」
見ると、地面には小さな骸骨があった。そして散らばった細い骨。鳥肉でもない。きっと、何らかの小動物。
「あっ、こっちにも・・・」
ばらばらになった細い骨。そして、鳥の頭蓋骨のようなもの・・・
「帰りましょうか?」
カレンは尋ねる。
「い、いや、行ってくれ」
「あら、ピーター、怖いの?」
「怖いよ。気味が悪い」
車は奥へと進んでいく。商店街を越え、広場に出て、さらに奥へ。
「ところであなたは」
アイが突然口にする。
「?」
「どうしてメカ・インディオに呪いを?」
「・・・・・」
カレンは黙った。しばらくして、口を開いた。
「たまたま・・・近くの墓地にいたらそうなったの」
「そう・・・」
「この辺り一体は誰も近づこうとはしないわ。ここに来て行方不明になった人もいる」
「メカ・インディオの仕業ね」
「そうだろうな」
車はゴーストタウンの中央に来たくらいで左に曲がる。少しゴミ捨て場寄りだ。
「ここよ」
カレンが指差した先に、山に続く小さな石段があった。
「メカ・インディオはこの階段の上にある展望台に住んでる」
「知ってたの?」
「噂よ。この展望台は昔人身供儀が行われていたの」
「人身供儀?」
「人間を生け贄に捧げることよ。よくこんなところにコンビナートが建ったものだわ」
「・・・そうだな」
「メカ・インディオが怒るのも無理はないわ」
「登りますか?」
再度、カレンは尋ねる。
「その必要はない」
突然、背後から声がした。
メカ・インディオである。
「誰だっ!?」
「ここはお前達の墓場だ。すばらしい墓場を選んだ。手厚く葬ってやろう」
ヒュッ!
矢が地面に突き刺さる。その後も二、三本刺さる。
「!!」
アイはすかさず腕時計に隠してある小型のカメラで写真を撮る。だが、信頼してくれるであろうか。そんなことよりも、メカ・インディオは何を・・・
「ほう、わざわざ殺されに来たか」
三人とも、動きは機敏だったのか、矢は避けることができた。メカ・インディオは一度矢を放つのをやめ、ピーターたちをギロッと見た。
「・・・!!」
顔は金属の板を骸骨の形に張り合わせたような形で、胴体もすべて骨格のように金属で骨組みがされている。背骨は曲がっており、巨大なネズミのように四つ足で歩く。目は空洞。そして、頭にはバンドに長い鳥の羽。そして片手には大きな剣、背中に弓矢。
「確かに名前の通り、メカニックなインディオね」
「アイ」
ピーターは遮った。
「忠告しておく。メカ・インディオを挑発させるような言葉は言わないように」
「ラジャ・・・」
「決着を付けにきたんだとな」
メカ・インディオの突然の言葉に、アイはドキリとした。「そうよ」とも言うことができない。
「どうした?私を見てビビったか」
声は機械のような声ではなく、普通の人間の声だった。しかし、誰かが操っている様子もなく、ただの機械が動いているだけである。
「お前は生け贄にふさわしい。こんなに綺麗な生け贄が手に入るとはな」
間違いなくメカ・インディオはアイの方を見ていた。写真を撮ったことに気が付いたのだろうか?呪いとは一体何のことだろうか、と、アイの頭の中でいろいろな考えが渦巻く。
「・・・・・」
ピーターは苦笑いした。そして速攻でこう言った。
「悪いがそいつは整形手術した不細工だぜ。生け贄にするんならもっと可愛子ちゃん選ぶんだな」
「・・・!!」
先程、ピーターに「メカ・インディオを挑発させるような言葉は言わないように」と言われたばかりなのに、何だ何だこの悪口は!あたしだって好きで整形手術したわけじゃ、いや、それどころじゃない、何が「不細工」ですってぇ!?
「・・・そうか」
メカ・インディオはただただ「そうか」と、言っただけだったが、アイにとっては自分に言われた「不細工」という言葉にメカ・インディオも納得・同意しているように聞こえたのである。
「このバカタレが!!」
アイはピーターにハイキックを食らわした。
「いってぇ・・・」
そしてメカ・インディオに発砲!!パァン、パァンという軽々しい音ではない。
ズバババババババ・・・
「メカ・インディオ!こいつに呪いなんかかけたら後々とんでもないことになるぞ!」
どっちの見方をしているのかわからないピーターに、ボーッとつっ立ったままのカレン。そしてカシャン、と、音を立てて弾切れ。
「・・・・・」
ところがメカ・インディオは無傷のように見える。
「私にそんなものが効くものか」
「くっ・・・」
アイは歯を食い縛った。
そしてその時こそまさに、ヒューという音がして、爆弾が落っこちてきたのだ。
***
また、テドロを乗せたレダの赤いスポーツカーはゴーストタウンの入り口に来ていた。
「コンビナートニュータウン?安易なネーミングね」
一度車を止め、レダはサングラスを取り、右手で自分のこめかみを押した。
カシャッ
と、小さな音がした。普通の人にならきっと聞こえないくらいの音だろう。
「カメラ?」
テドロは後部座席から尋ねた。
「そうよ」
さらにレダはこめかみを二、三回押す。
「レダ、車の跡がある。おそらく彼らは中に入ったんだろう」
ペッパーは助手席にいた。少し身を乗り出して、ピーターたちが乗っていった車の跡を確認した。
「レダ、運転かわれ。写真を頼む」
「あいよ」
一旦エンジン切り、ペッパーが運転席に着くと、再びエンジンを入れた。
「どうしたの?」
「嫌な予感がする」
「どんな?」
「勘だ」
「またそんなこと言って。兄貴の勘はあんまり当たらないんだから」
「違う今回は」
ヒューーーーー!!
突然、ロケットが発射されたような細い音がした。
「?」
「逃げるぞ」
ペッパーはハンドルを切り、アクセルに力を入れた。
ドオオオオオオン!!
ゴーストタウンは炎上し、瓦礫の山と化した。
第十四話「歌よ、響け」につづく
まさにその爆発が起きるという頃、ピーター達を乗せた車は、ゴーストタウンに来ていた。
「ここよ。きっと奥にいるわ」
カレンはトラックを止めて入り口に敷かれてあるコーンを退かした。
「入っていいの?」
「誰も来やしないわよ」
周りは普通に森。右にしばらく行けば湖が見える。そして来た道を少し戻ればゴミ捨て場。前に広がるのは自然の森を切り開いて建てられたマンション群。おそらく昔は白くて綺麗な外装だったが、今では壁は汚れ、ツタ植物が這っている。窓ガラスは割れ、建物自体にも亀裂が入っており、確かに危険な様子である。
「警察には言わないでね」
「あ、ごめん、あたし、警察なの。すっかり言うの忘れてたわ」
ピーターとのおしゃべりに慣れてきたせいであろう、すっかり自分が警察であることを忘れていた。
「そう・・・」
「かまわないわ。進んで頂戴」
アイはゴーストタウンの先を睨む。長く続く暗い建物たち。住宅だけでなく、昔に商店やレストランがあったような面影。ざっくばらんに生えた雑草、ひっぺがえされたアスファルト。
「決着を付けようじゃないのよ。その、メカ・インディオとやらと」
その時、一匹の猫が目の前を通り過ぎた。
「ア、アイ・・・」
ピーターはその猫が通った後を見て、驚いた。
「冗談じゃないぜ・・・ここは墓場だ!」
「!!」
見ると、地面には小さな骸骨があった。そして散らばった細い骨。鳥肉でもない。きっと、何らかの小動物。
「あっ、こっちにも・・・」
ばらばらになった細い骨。そして、鳥の頭蓋骨のようなもの・・・
「帰りましょうか?」
カレンは尋ねる。
「い、いや、行ってくれ」
「あら、ピーター、怖いの?」
「怖いよ。気味が悪い」
車は奥へと進んでいく。商店街を越え、広場に出て、さらに奥へ。
「ところであなたは」
アイが突然口にする。
「?」
「どうしてメカ・インディオに呪いを?」
「・・・・・」
カレンは黙った。しばらくして、口を開いた。
「たまたま・・・近くの墓地にいたらそうなったの」
「そう・・・」
「この辺り一体は誰も近づこうとはしないわ。ここに来て行方不明になった人もいる」
「メカ・インディオの仕業ね」
「そうだろうな」
車はゴーストタウンの中央に来たくらいで左に曲がる。少しゴミ捨て場寄りだ。
「ここよ」
カレンが指差した先に、山に続く小さな石段があった。
「メカ・インディオはこの階段の上にある展望台に住んでる」
「知ってたの?」
「噂よ。この展望台は昔人身供儀が行われていたの」
「人身供儀?」
「人間を生け贄に捧げることよ。よくこんなところにコンビナートが建ったものだわ」
「・・・そうだな」
「メカ・インディオが怒るのも無理はないわ」
「登りますか?」
再度、カレンは尋ねる。
「その必要はない」
突然、背後から声がした。
メカ・インディオである。
「誰だっ!?」
「ここはお前達の墓場だ。すばらしい墓場を選んだ。手厚く葬ってやろう」
ヒュッ!
矢が地面に突き刺さる。その後も二、三本刺さる。
「!!」
アイはすかさず腕時計に隠してある小型のカメラで写真を撮る。だが、信頼してくれるであろうか。そんなことよりも、メカ・インディオは何を・・・
「ほう、わざわざ殺されに来たか」
三人とも、動きは機敏だったのか、矢は避けることができた。メカ・インディオは一度矢を放つのをやめ、ピーターたちをギロッと見た。
「・・・!!」
顔は金属の板を骸骨の形に張り合わせたような形で、胴体もすべて骨格のように金属で骨組みがされている。背骨は曲がっており、巨大なネズミのように四つ足で歩く。目は空洞。そして、頭にはバンドに長い鳥の羽。そして片手には大きな剣、背中に弓矢。
「確かに名前の通り、メカニックなインディオね」
「アイ」
ピーターは遮った。
「忠告しておく。メカ・インディオを挑発させるような言葉は言わないように」
「ラジャ・・・」
「決着を付けにきたんだとな」
メカ・インディオの突然の言葉に、アイはドキリとした。「そうよ」とも言うことができない。
「どうした?私を見てビビったか」
声は機械のような声ではなく、普通の人間の声だった。しかし、誰かが操っている様子もなく、ただの機械が動いているだけである。
「お前は生け贄にふさわしい。こんなに綺麗な生け贄が手に入るとはな」
間違いなくメカ・インディオはアイの方を見ていた。写真を撮ったことに気が付いたのだろうか?呪いとは一体何のことだろうか、と、アイの頭の中でいろいろな考えが渦巻く。
「・・・・・」
ピーターは苦笑いした。そして速攻でこう言った。
「悪いがそいつは整形手術した不細工だぜ。生け贄にするんならもっと可愛子ちゃん選ぶんだな」
「・・・!!」
先程、ピーターに「メカ・インディオを挑発させるような言葉は言わないように」と言われたばかりなのに、何だ何だこの悪口は!あたしだって好きで整形手術したわけじゃ、いや、それどころじゃない、何が「不細工」ですってぇ!?
「・・・そうか」
メカ・インディオはただただ「そうか」と、言っただけだったが、アイにとっては自分に言われた「不細工」という言葉にメカ・インディオも納得・同意しているように聞こえたのである。
「このバカタレが!!」
アイはピーターにハイキックを食らわした。
「いってぇ・・・」
そしてメカ・インディオに発砲!!パァン、パァンという軽々しい音ではない。
ズバババババババ・・・
「メカ・インディオ!こいつに呪いなんかかけたら後々とんでもないことになるぞ!」
どっちの見方をしているのかわからないピーターに、ボーッとつっ立ったままのカレン。そしてカシャン、と、音を立てて弾切れ。
「・・・・・」
ところがメカ・インディオは無傷のように見える。
「私にそんなものが効くものか」
「くっ・・・」
アイは歯を食い縛った。
そしてその時こそまさに、ヒューという音がして、爆弾が落っこちてきたのだ。
***
また、テドロを乗せたレダの赤いスポーツカーはゴーストタウンの入り口に来ていた。
「コンビナートニュータウン?安易なネーミングね」
一度車を止め、レダはサングラスを取り、右手で自分のこめかみを押した。
カシャッ
と、小さな音がした。普通の人にならきっと聞こえないくらいの音だろう。
「カメラ?」
テドロは後部座席から尋ねた。
「そうよ」
さらにレダはこめかみを二、三回押す。
「レダ、車の跡がある。おそらく彼らは中に入ったんだろう」
ペッパーは助手席にいた。少し身を乗り出して、ピーターたちが乗っていった車の跡を確認した。
「レダ、運転かわれ。写真を頼む」
「あいよ」
一旦エンジン切り、ペッパーが運転席に着くと、再びエンジンを入れた。
「どうしたの?」
「嫌な予感がする」
「どんな?」
「勘だ」
「またそんなこと言って。兄貴の勘はあんまり当たらないんだから」
「違う今回は」
ヒューーーーー!!
突然、ロケットが発射されたような細い音がした。
「?」
「逃げるぞ」
ペッパーはハンドルを切り、アクセルに力を入れた。
ドオオオオオオン!!
ゴーストタウンは炎上し、瓦礫の山と化した。
第十四話「歌よ、響け」につづく
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